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2. 日本近海の波浪の特性について

 

2.1 はじめに

波浪中の船体応答等に基づいて新しい満載喫水線基準の要件の検討を行うためには、日本近海の波浪データを収集して航行区域ごとの海象の特徴を明らかにするとともに、船体応答推定法の入力データとして整理する必要がある。既存のデータとしては、船舶技術研究所において船舶通報データや波浪追算データを収集し統計的に解析した結果を図表にするとともに波浪データベースとして整備したものがある。しかし、それらのデータは北太平洋全域を対象としているため、データの区分海域が広く、内航船の基準の検討にはさらに詳細な情報が必要になると考えられる。そこで、本部会において新たに日本近海の詳細な波浪情報を収集・整理し、船体応答推定法の入力データとするとともに、その統計的性質について調べたので以下に示す。

 

2.2 データソース

データは、(財)日本気象協会作成の局所波浪データを用いた。これは1日2回気象庁から配信される風の現況データを基に気象協会で波浪推算を行ったデータである。現況データは6’格子で配信されるが、地形による遮蔽と局所的な風波を加味した2’格子の値で推算を行なっている。図2.1に計算地点を示す。これらの海域についての波高、波周期、波向、風速、風向のデータが1994年2月から提供されている。

 

2.3 波浪発現頻度

乾舷及び船首高さの評価計算(海水打ち込みの長期予測計算等)の入力データとするため、限定近海区域及び沿海区域のデータを抽出し、波浪頻度分布表を作成した。これらを表2.1から表2.2に示す。

これらの表から限定近海では沿海に比べて平均波高が大きく、平均波周期も長くなっていることが分かる。その差は平均波高で10〜15cm、平均波周期で0.1〜0.3秒程度となっている。また、沿海及び限定近海では10秒をこえる長周期の波は夏季及び秋季に集中していることがわかる。

沿海と限定近海の違いによる波高分布の違いを調べるために波高の超過確率を求めた。さらに比較のために、船舶技術研究所でまとめられている北太平洋の波浪追算データのうち近海区域に相当するもの及び北太平洋全域のデータをまとめたものを示す。これらを図2.2に示す。これらのことから沿海及び限定近海ではほとんど差はないこと、外洋に行くにつれて大波高の頻度が高くなることが分かる。もとになっているデータは異なるものの、近海以遠と沿海及び限定近海では波高の超過確率に違いがあり、特に冬季にその差は大きくなる。これらのことから限定近海区域での海象の特性は近海及び遠洋よりもかなり沿海に近いと考えられる。

 

 

 

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