1. 緒言
1.1 研究の背景
船舶の満載喫水線については、外航船については「1966年の国際満載喫水線条約(LL66)」に技術基準が定められ、内航船については、1968年(昭和43年)に国内規則として技術基準が制定されている。
しかし、LL66制定当時は、耐航性理論等が十分に発達していなかったこともあり、主として経験則に基づいて技術基準が定められたといわれており、LL66に併せて制定された内航船の国内規則も同様の事情にあると推測される。
その後、特に近年、船体運動理論、耐航性理論等が発達し、技術基準の理論的検討が可能な状況となっており、理論的に実証された合理的な満載喫水線の基準の策定が可能となり、また、現行基準の見直しも望まれている。
一方、LL66は、技術基準の改正もエクスプルシット方式(改正の受諾に明確な意志表示が必要で、締約国は批准等の手続きが必要となる)のため数々の技術基準の改正が採択されていながら、一つも発効していないのが現状である。このため、IMOでは「国際満載喫水線条約に関する1988年の議定書(LL88)」を策定し、技術基準の改正をタシット方式とすることとした。同議定書は採択後十数年を経ても発効しなかったが、最近になり、同議定書が発効要件を満たし、平成12年2月3日に、議定書が発効することとなったため、一挙に技術基準の改正の検討が開始される可能性がある。
従って、内航船、外航船を通じ、現行の満載喫水線基準を見直し、理論的に整合のとれた合理的な基準とするため、本会に第45基準研究部会を設置し、平成8年度から4ヶ年計画により調査研究を実施することになった。
また、IMOにおける満載喫水線の見直しに対しても対応して行くこととした。
1.2 研究の目的
内航海運の効率化を図る観点から、平成7年7月に船舶安全法上「限定近海船(概ね距岸100海里以内を航行する内航貨物船)」に係わる新基準が設けられたが、多数の内航船が限定近海船に該当するためには、満載喫水線基準の見直しが不可欠であり、また、内航海運業界からの要望も強い。そこで本研究では、内航船の満載喫水線の基準について、船型、航行実態に即した合理的な基準とすることを目的として4ヶ年計画で実施するものである。