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私は海上保安官でありながら、このまま、帰国することには後ろめたいものを感じていましたが、18日昼ころ帰国のための荷作りをしていたところ、運輸省アタッシェから「保安庁の巡視船がくることになったので、残ってください。」との連絡が入りました。結果的には巡視船はシンガポールで待機することになり、あまりお役に立てずに帰国することになりましたが、治安が悪いといわれていた高速道路を通って、海上保安庁の先遣隊を迎えにいったり、街の幹線道路は軍隊が警備し、交通遮断されているところを、心もとないインドネシア語で説得して強引に突破し、大使館に向かったこと等が思い出に残りました。

 

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(1998年6月に実施された総選挙における民主党のキャンペーン、ジャカルタの道路という道路は民主党支持者で埋め尽くされた。

 

4. おわりに

ジャカルタ暴動事件が巷で噂されているような計画されたものであれば、ジャカルタで今後同じような暴動が起こる可能性は低いと思われますが、スハルト大統領の強権政治が終わり、今まで押さえつけられていた人々が自由に活動し発言するようになったため、インドネシア各地で新たな民族対立、宗教対立による暴動が発生しています。これは、かつて、ソ連が民主主義というパンドラの箱を開けた途端、各地で独立運動や民族対立が起きた現象に似ています。

 

 

 

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