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日本にいても、かつて住んだ外国のことを無意識に気にする状態が恒常化するのである。そのため、再びかつての勤務地に舞い戻ったときには、かつての友人を始め、かつて自分が親しんでいたその国の全てが一瞬にして自分を呑み込み、ここでも、再勤務の際に、自分の住んでいたころの「過去」が赴任時の「現在」に直結するような気分を味わう。

どうも、判りにくい独りよがりのことばかり述べたような気がするが、海外と日本を往復していると、不思議な心理的経験をするようである。30年位前に読んだ、森有正氏の「霧のノートルダム」という本に、「経験」に関する氏の思索とともに、海外の経験の層というような感覚が述べられていたような気がする。今となってはその正確な内容についてご紹介できないのが残念である。

さて、話題は変わるが、本誌に対しては、より、現実の業務に即したものにすべきであるとのご助言もあり、国際課としてもより役立つ形での、情報提供手段とするべく、検討を開始している。そのため、本誌の、このような形での発刊はこれが最後になるかも知れない。

着任後、4ヵ月を経て、2回の国際緊急援助隊の派遣、東チモールヘの巡視船の派遣、ロシアとの定例協議、長官の指揮のもとで行われた韓国との合同訓練、海賊問題への対応と、慌ただしく、いろいろな出来事が生起した。今後、更に国際社会に貢献していくとともに、国際社会を活用しつつ、当庁の業務の高度化を図っていくために、過去の業務経験や考え方の整理が必要になってきているといえよう。全力で走り出さないと汽車に乗り遅れそうなので、皆様のご支援をお願いする次第である。

 

 

 

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