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国家権能のうち、立法権については、連邦は基本法に定められた「専属的立法」と「競合的立法」(州は、連邦が立法権を行使しない間、及び限度において立法権限を有する。)の範囲においてのみ立法権を有するとされているが、実際には、競合的立法の分野は広範にわたり、かつ、実際にこの分野のほとんどで連邦が立法権を行使しているため、州の自主的な立法権の範囲は限定されている。

これに対し、行政権においては州の優越が顕著であり、連邦の固有事務とされているのは、外交、国防、通貨、鉄道など限定的である。これ以外の分野では、州が、固有の事務として、又は連邦の委託を受けて行政権限を行使している。

ロ 運輸関連事項の権限配分

基本法体系における運輸関連事項の権限配分の概要は次のとおりである。

(イ) 立法権については、

a 連邦の専属的立法分野とされているものは次のとおり。○通商航海条約、○航空、○その全部又は過半数を連邦が所有する鉄道(連邦の鉄道)、○連邦の鉄道の建設・維持及び運営並びに線路使用料の徴収

b 競合的立法分野とされているものは次のとおり。○遠洋航海及び沿岸航海、航路標識、内水航行、気象通報並びに海洋航路及び一般交通用の内陸水路、○道路交通、自動車交通制度、遠距離交通用の陸路の建設及び維持並びに自動車の公道利用の料金の徴収及び配分、○山岳鉄道を除く連邦鉄道以外の軌道

このように、競合的立法分野においては、すでにほとんどの事項について連邦が立法権を行使しているため、運輸関連の主要分野は連邦法の規律するところとなっているといえる。

なお、ECの市場統合に伴い、運輸・交通分野でも数多くのEC共通規制が導入されており、EC規則(加盟国の国内法化の手続きなしに直接適用される)及びEC指令(国内法化の手続きが必要)が、重要な役割を果たしている。

(ロ) 行政権については、

a 連邦固有行政とされているもの。○連邦の所有する水路、1の州をこえる内水航行等に係る行政(連邦自らの下部機構を使う)、○航空交通行政(その組織形態を公的機関とするか、私的機関とするかは法律で定める)○連邦の鉄道に係る鉄道行政(その一部を法律により州に委託できる。また、連邦の鉄道は私法上の法人形態で運営される)

b これ以外の事務は、連邦の委託に基づき(例えば、連邦遠距離道路の建設、管理など)、または州固有の事務として(例えば、バス、地下鉄等に係る事務など)、州が行政権を行使している。

 

 

 

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