(2) 業務所掌
イ ドイツには、日本の海上保安庁や米国のコーストガードのように海上保安・安全を一元的に所掌する組織はなく、かつ、連邦制のため所掌組織、部署を特定するのが難しい。
分野別にその所掌機関等を概略列挙すると、次の通りである。
・水上安全行政(航行安全、流出油回収、浮標設置等)……連邦交通・建設・住宅省
・不審船担当……沿岸部は、州の水上警察の管轄。連邦交通省が昔から持っていたものであるが、現在は、特に複数の州に跨がる場合にEW24課が水上警察と調整している。
・国境警備(不法移民、不審船取締り等)……内務省国境警備隊
・漁業関係法令違反船の取締……農林省
・関税(禁止品の密輸等)……大蔵省
・麻薬関係……
LS22課
内務省国境警備隊
とそれぞれ担当し、複雑な組織となっている。
・周辺諸国の海域との調整……LS23課。
IMO関係で事前調整を要する時等には当課へ連絡いただきたい。
海上政策的なものは、LS22課。
なお、全体的には、LS01課(海運部の調整課)が担当。
ロ これは、新しい独自の組織を作るのではなく、従来からの組織は維持しつつ、さまざまな協力をしながら任務を遂行し、効果を上げようということである。
付言すれば、自分達がとった解決法は、ドイツが連邦制であるためにこれを活用する形での組織である。
(3) ドイツの立法・行政体系
ここで、ドイツにおける連邦と州との立法・行政体系を見ると、次のとおりである。
イ 連邦と州の権限配分の原則
西独が旧東独を吸収合併する形で成立した統一ドイツの基本的制度は、すべて旧西独のそれを踏襲したものとなっており、立法・行政体系についても、旧西独の憲法に当たる「ボン基本法」の定めるところによっている。
1949年5月24日に発効した基本法は、広範な自治権を有する州の連合による連邦制を基本的な国家体制の一つとしており、現在は、16の州(旧西独11州(ベルリンを含む。)、旧東独5州)から構成されている。連邦政府とこれら各州との権限配分については、基本法に「国家の権能の行使及び任務の遂行は、基本法が別段の定めをせず、又は許さない限り、州の仕事である」(30条)旨が定められており、州の優越が明らかにされている。