5.3.3 ウェザー・ルーティングの効果の推移
WRSの利用価値を効果的にする、技術以前の自然条件は、東西距離が長いこと、気象海象が不規則で、航行安全度の格差が大きい比較的高緯度であること、選択可能水域が広いこと等が挙げられ、北太平洋がその典型である。
北大西洋は東西距離が比較的短く、流水やGrand Bankによる海域の制約が大きく、南インド洋および南大西洋は、気圧配置がある程度定型化していること、大圏航路が選択外であることなど、メリットは少ない。
北太平洋、東航船にとって風波は一般的に大部分が追い風追い波と思って間違いないが、航路選択によって風力、波高の程度の差は大きい。
西航船については、昔から「南ルートを採った船の方が、船体・積荷のダメージが大きい」とよく言われてきた。重大事故の発生海域は全て、30゜N〜37゜Nと比較的低緯度である。
本節では、WRSの効果とその向上の見込みについて、WRS団体等に対する聞取り結果をとりまとめたものを示す。
(1) ウェザー・ルーテイングの結果の評価手法
WRS団体等に対する聞取り結果によれば、一般的に評価項目として航行時間の短縮をあげている。本来ならば、各航海ごとに気象条件およびこの影響による航路の差異、積荷、船体の状況等に違いがあるため、時間短縮率として評価できれば望ましいが、こうした集計は実施されていないとのことである。民間WRS団体では、航海時間の短縮以外に、波による速力の低下(W.E.削減量)を評価指標として用いている。「航海時間の短縮時間」および「W.E.の削減量」の評価方法の一例を次に示す。
短縮時間:tp-ts
tp:推薦航路を航行した時の航行時間
ts:大圏航路を速度vs1で航行した時の速度
vs1:推薦航路を航行した時の速度から波浪の影響を除いた平均速度
W.E.の削減量:vp-vs2
vp:推薦航路を航行した時の平均航行速度
vs2:Vs1で大圏航路を航行し実況波浪の影響を受けたときの平均速度
(2) ウェザー・ルーティング・サービスの効果の推移
ある団体では、a)に示したような評価は平成7年度以降のWRSについて実施している。これらのレポートは、各顧客に対するWRS終了後その評価を行ったものであり、table 50にこれらのデータについてとりまとめたものを参考として示した。