日本財団 図書館


(イ) 第3世代波浪モデル

風波の発達・減衰、うねりの伝播は、波浪の発達を記述する力学の精度に依存する。波浪モデルは以下のエネルギーバランス方程式を基に計算される。

 

095-1.gif

 

ここでE=E(f,θ,χ,t)は、位置χ、時刻tに対する波浪の2次元エネルギースペクトルで周波数f、方向の成分θで表現される。Cg=Cg(f)は群速度であ。Snetは外力項を表し、風によるエネルギーの入力Sin、成分波間の非線形エネルギー輸送Snl、砕波や粘性等によるエネルギーの消散Sdsの3つから構成される。この中で非線型エネルギー輸送の取扱いは特に計算量が大きくなることから、無視するか(第1世代モデルと呼ぶ)、簡単なパラメータを用いて表現していた(第2世代モデルと呼ぶ)。MRI-IIを含めた第2世代の波浪モデルは、風波の発達程度、風が急変した場合のスペクトル表現や、うねりの伝播状況等に若干精度が伴わない時がある。近年、計算機の能力アップによってある程度の近似をおこなえば非線形項もまともに計算することが可能になった。これを第3世代波浪モデルと呼ぶ。気象庁でも、第3世代波浪モデルのプロトタイプを気象研究所において開発し、平成9年度末に現業化に向けて海上気象課で準備を進めている。

第3世代波浪モデルを導入することで、台風域内等の風浪とうねりの表現が改善され、特に現用のモデルで顕著だったうねりがすぐに減衰してしまう欠点が改善される見込みである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION