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(イ) 数値波浪モデルの精度の推移

数値波浪モデルにおいても、新たなモデルの導入、更新等があった場合、モデルの精度の検討が行われている。

外洋の波浪予測業務が本格化する契機となった、わが国初の数値波浪モデルであるMRI-I導入以前、気象庁では気研モデルを用いて数値波浪モデルの検討・開発を行っている。この時使用されていたモデルは気研モデルと呼ばれており、わが国近海を対象とするものであった。

土田ら(1975)は、気研モデルについてポイント相関係数(計算波高と実況波高の相関係数)を指標として複数の海域において最大48時間までの予測結果について検討を行っている。0時間予測値(波浪予測では初期値も計算によって求めており、予測時間0でも相関係数は0にならない)であっても相関係数が0.7を下回るものもあり、48時間予測値では非常に悪くなっている。また、地点ごとに相関係数が大きくばらついていることも望ましいとは思えない。ただし、同報の中で土田らが指摘しているが、ポイント相関係数は波高のパターンは類似しているが周期が異なる場合、高い相関係数は望めず、参考程度にとどめるべきだと述べている。

わが国初の数値波浪モデルであるMRI-IからMRI-IIへの更新の際、気象庁海洋気象部海上気象課(1986)が、計算結果と実況値の波高および周期の平均自乗誤差、波向の偏差のヒストグラムによる等による新旧モデルの比較を行っている。波高の相関係数については大まかに言って新旧とも、0.7〜0.9の間にあり概ね良好である。同報によると波高の相関係数については、優位差なしとの結論が示されている。なお、波向の偏差については海上ブイロボットのデータ現状を上手く反映できていないとの、指摘もあった。

これ以後の検討結果では、モデルの比較・検討のための指標として、波高・周期それぞれの計算値および実況値の平均自乗誤差、相関係数が用いられているようである。

table 48におよびFig.30に示されていないが、地球全域をほぼ対象範囲とする全球波浪モデルが、1996年に導入されている。この全球波浪モデルについては、市成ら(1997)が波高について計算値およびブイロボットから得られた実況値の相関係数を求めている。両者の相関係数0.8は3日間程度まで維持されるが、8日後には0.5程度となる。

その他、波浪予測に重要な海上風予測に関連するモデルの精度比較が、気象庁海洋気象部海上気象課・気象庁予報部予報課(1989)、気象庁海洋気象部海上気象課(1990)により発表されている。

 

 

 

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