H-カーブに加えて特定のクラスの船舶のための、経験的な減速曲線も開発されている。しかしながら、気象予報データの精度不足や、また、船舶の積み荷条件についての詳細な情報が不足していることの方が、その船舶固有のカーブを使用するかどうかよりも重要であることが多い。多くの異なった速度曲線を保存したり使用したりしても、コンピューターの処理時間が長くなるだけで実質的に精度が大幅に向上することはないため、むしろWR・プロセスを最適化するためにH-カーブが日常的には使用されている。
・SRA(Speed Reduction Algorithm)プログラム −減速計算プログラム−
一方で、将来期待される気象予測のモデルの大幅な精度の向上に対応して減速アルゴリズム(SRA: Speed Reduction Algorithm)プログラムが開発されている。気象による減速の一般化された関係を同型船に使用するH-カーブのやり方に替わって、SRAプログラムは個々の船舶の精密な形状を使用して船舶に作用するさまざまな外力を計算する。これらの外力には、風による抵抗、波抵抗、海流、海水中を移動することによって発生する摩擦抵抗などが含まれる。これらの抵抗を克服するために必要なエンジン出力を使用可能なエンジン出力から差し引き、これを基に船の速力が求められる。正確な天候のデータおよび詳細な船体構造と積荷条件のデータなどと合わさって初めて、SRAプログラムは非常に正確な結果を生み出す。
しかしながら、WRSが提供されるときには、しばしば船体や積み荷についての詳細な条件がサービスを提供する側では分かっていないことが多い。このためSRAプログラムは、設計速力、設計喫水、船体の深さ、垂線間長、船幅、載貨重量トン数および船舶の形状など、船舶についての最低の情報で運用できるようにプログラムされている。通常この情報は、例えばロイズ船級協会からの出版物などによって入手することができる。
正確な天候データが入力されるならばたとえ船舶についての情報が最低の量のものでも、SRAプログラムを使用することによって非常に正確な速力推定ができる。さらに、実際の航海の喫水、乾舷、トリム、軸馬力、船底汚損の程度などについて追加の情報が提供されるならば、SRAプログラムの精度はさらに良くなる。Fig.28に大型コンテナ船(長さ 262m)、自動車専用船(長さ 180m)、大型タンカー(長さ 324m)についてのSRAプログラム出力の実例を示す。