例えば風力階級8〜9の横風に遭遇している船舶の速度は、平水状態で航行する速度の約80%に減少する。実際に運用されているH-カーブはさらに2方向からの波やうねりなどの他の要因も考慮している。H-カーブはコンピューターによる推測航法を行うには非常に適したものである。H-カーブは速力低下率と船舶の進行方向と相対的な風や波の状態との波の関係を表しているため、プログラム化が簡単である。他に入力しなければならないのは風の状態(風力、風向)および平水状態での船の速度だけであるため、多数の推測航法計算を非常に短時間の間に実行することができる。H-カーブの短所は、これが特定の船舶に固有のカーブではなく一般的な船舶のパフォーマンスカーブであるということである。H-カーブによる推測航法は、実際の船舶の形状、サイズおよび積荷条件により精度がさまざまに変動する。しかしながら、H-係数という補正係数を船舶の形状、サイズ、積荷条件がさまざまに異なる船舶に対して使用することにより、特定の船舶のパフォーマンスを表すことが可能で、それによりH-カーブの能力は大幅に増大する。一般に特定船舶にH-カーブを通用することにより生じる推測航法上の誤差は、気象予報が不正確であるために(あるいはデータ希薄地域の実況解析の不正確さのために)生じる誤差よりもはるかに小さい。