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民間のWRS団体では、平成7年度以降のWRSについて評価を実施している。しかし、データ数が少ないこと、航海時の詳細なデータが未詳なことから、WRSによる航行日数の削減効果の傾向をつかむことは困難であった。

また、別の民間WRS団体の回答では、過去の資料について詳細なデータはとりまとめられておらず、WRSによる航行日数の削減効果は、北太平洋航路について夏季で半日、冬季で1日程度(横断には、高速船で片道10日間を要する)であるとのことであり、過去10年程では大きく異ならないとのことであった。

 

(4) 波浪予測の将来的な予報可能期間

WRでは、数値波浪予報に基づいて推薦航路の選定が行われており、予報可能期間はWRによる航行日数の削減効果に大きな影響を与える。

現在の数値波浪予報では、予報可能期間は3〜4日程度である。北太平洋は、WRによる航行日数の削減効果が最も期待できる航路であるとされている(ウェザー・ルーティング研究会、1992)が、20knt程度の高速船でも横断に片道で約10日を要する。この北太平洋航路を例に取れば、予報可能期間が10日に延長され、その予測値が入手可能になれば、WRによる航行日数の削減効果は大きく向上する。ここでは、わが国の気象庁の波浪予報業務の変遷とこれに伴う予報精度の推移について述べ、最後に今後の予報可能期間の傾向について考察する。

 

(ア) 波浪予測業務の変遷と精度の推移

現在、先進国のほとんどが数値気象モデルを用いて、予報業務をとりおこなっている。数値気象モデルの発展にはコンピューターの計算能力の向上が少なからず関与している。

わが国の気象波浪業務は、1972年に波浪予報業務が始まっている(羽島、1991)。

数値波浪モデルはこれまでに何度かの更新がなされており、こうした、モデルの更新時に新旧モデルの比較などが実施されその結果が公表されている(土田ら、1975;気象庁海洋気象部、1986;市成、1997)。また、波浪予測に重要な海上風予測に関連するモデルの精度比較についての結果もいくつか公表されている(気象庁海洋気象部、1989;1990)。これらの既存の資料では、モデルの比較・検討のための指標として、波高・周期それぞれの計算値および実況値の相関係数、二乗平均平方根誤差(RMSE)等が用いられているが、集計範囲(地点、予測時間等)が異なることから、これらの値をおしなべて比較することはできない。このため、数値波浪モデルの予報可能期間の推移について既存の資料から情報を得ることは困難であった。

 

 

 

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