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WRSは船舶、気象などWRに必要な知識を十分に備えた、ルート・アナリストにより実施される。ルート・アナリストは、WRSの対象となる船舶が出航する前に、その船舶に関する情報(喫水線、積荷の状態、平水速度等)を可能な限り入手する。次に、過去の統計結果から、推薦されるべき航路を大まかに選定し、これについて気象関連機関から提供される予報プロダクト(予測値、実況値、実況図、予想図等)および既存の統計値に基づいて最適航路を決定する。また、その際、予測値データに基づいたコンピュータ・プログラムが最適航路の選定の中心となる。現在、予測値の十分な精度が維持される予報可能期間(以後、予報可能期間)は、3〜4日程度である。このため、ルート・アナリストは、予報プロダクトが更新される毎に最適航路を更新し、最新の最適航路を対象船舶に連絡する。

航海終了後、実況値等を基に推薦された最適航路(推薦航路)について検証が行われ、顧客に報告される。この際にもいくつかの、コンピュータ・プログラムが使用される。一般的に行われている評価の指標は、WRSを受けた船が実際に航行した時間と同じ海象条件下で最短距離航路を航行した場合の時間の差である。最短距離航路を航行した場合より、実際の航行時間が短縮されていれば、WRSは成功したことになる。ただし、悪天候域、航路上の氷山などを迂回することによる航行時間の延長もあり得る。

上述のように、WRSのためにいくつかのプログラムが開発されているが、全てのプログラムが推薦航路の選定に使用されているわけではなく、主として事後の評価に使用されている。これは、予報可能期間が3〜4日であるため5日を越える長期の航海では傾向予想になり、予報可能期間が延長されれば、これらのプログラムも推薦航路の選定に使用可能になる。

 

(2) WRSの利用状況

民間WRS団体等の聞き取りによれば、WRSの利用数(約1500航海/年)は、1991年のピーク時を境に、最近の利用数は60%程度に落ちこんでいる。利用数の減少傾向の理由としては、顧客側の経費削減によるとのことである。

WRSの代表的な船種毎の利用内訳は、コンテナ船およびPCCはほぼ全船、バルクキャリアでは70%程度であり、タンカーではほとんど受けていない。また、夏季は海象が穏やかになるため、全体の利用率が30%程度減少する。コンテナ船は航行時間の短縮のため、PCCでは揺動からの積荷保護のためWRSを受けている。

 

(3) WRSによる航行日数の削減効果

WRSによる航行日数の削減効果の推移について、わが国のWRSを行っている団体に、聞取りを行った。

 

 

 

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