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引き続き、1995年に実施された鉄散布実験(IronEx II)では、太平洋東部の赤道付近の72km2の海域に、IronEx Iと同量の溶存鉄が、1週間の間に3度連続して船上から注入された。結果として、植物プランクトンの成長速度(細胞分裂速度)が2倍になり、植物プランクトン量が20倍以上に増加した。さらに、ブルームの発達とともに区画中央でのCO2分圧が急激に減少し、海洋から大気へのCO2フラックスが60%減少した。

 

(5) 技術開発推進に関する課題

 

1] CO2の海洋処分

a. 中層域へのCO2放流

CO2を放流する手段としては、CO2を海水で希釈してから放流する方法と、液体CO2を放流する二種類が考えられる。前者は、希釈の場所を、陸上、洋上、投入管部分のどこで行うかという問題があるが、全般的に希釈を行うための施設、装置が大がかりなものとなる。これに対して、後者は液体CO2を細かな粒状で散布し、海水中に溶解させる方法であり、散布直後の溶解が速やかに行われるような散布の機構の開発が必要となる。原理的には、放流管を用い、放流管に沿う細孔の大きさおよび放流管の長さを調整することなどが考えられる。しかしながら、2000m近い長さの放流管を設置、保持する技術、低温、加圧状態の液体CO2を効率よく操作する技術等、開発すべき要素も多く残されている。

 

b. 深層へのCO2貯留

窪地処分では、CO2の密度成層が天然の擾乱に対してどの程度安定に保持されるのかがまだ明らかになっていない。さらに、深海底から地中への浸透や反応についても、今後検討すべき課題が残されている。

深海底に実際にCO2を処分する方法としては、陸上もしくは船上から、パイプを通して液体CO2を注入させる方法が考えられる。我が国では、陸上にそのような大規模なシステムを建設する土地はほとんどないため、陸上からの注入は難しい。液体CO2の注入手段としては、船舶を用いる方法と、海上のプラットフォームを用いる方法がある。さらに、注入パイプを海底につなぐかつながないかで、方法が分かれる。一般的には、船舶と海底につないだパイプを組み合わせた「浮遊式パイプが、最も経済的と考えられる。

 

 

 

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