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これはCO2輸送タンカーを海底につながれたパイプと連結し、タンカーから直接CO2を注入するものである。CO2を注入するためのポンプはタンカーに設置されているため、海中のパイプに大規模な装置を設置する必要はない。また、パイプは通常海中に保持されているため、悪天候下においてもパイプを損傷から守ることができる。ただし、タンカーには海中に浸っているパイプを発見するためのシステムやシステムや位置制御のシステムを搭載する必要がある。また、パイプが損傷したとき、パイプを引き上げるのが困難であるという問題点もある。

 

c. 陸棚域帯水層への地中処分

CO2の地中処分では、CO2の浸出、漏洩や溶解による地下水の酸性化等を考慮しておくことが必要であり、貯留層となる地層やキャップロックの地質構造を入念に調査しておかねばならない。例えば、酸性化した地下水と周囲の鉱物との反応が岩質を劣化させる可能性もある。また、酸性水が外部に浸出した場合には、生態系への影響も含めて、さらに大きな影響が予想される。帯水層へのCO2の地中処分に関しては、帯水層の構造や地下水の流動、地中での酸性水と岩石との相互作用について、詳細な検討が必要である。

 

2] 鉄散布

鉄散布についても、いくつかの解決すべき課題が残されている。まず、酸素を含む通常の海水中では、鉄はFe3+として非常に不安定にしか存在できず、粒状物質に吸着してすぐ除かれてしまう。特に南極海では、顕著なサーモクラインがなく混合層がみられないことや、冬季には日射が著しく減少することから、鉄を散布したとしても粒状物などにすぐ除去されてしまう可能性がある。

さらに、鉄散布による生物の食物連鎖への影響が予測できていない。生態系に変化が生じると、動物プランクトンの群集が変化し、その捕食を経由する有機炭素の深層への輸送が予想どおり加速するかどうか明らかでない。また、植物プランクトンの過剰発生により、赤潮が発生する可能性がある。

たとえ生物ポンプがフル稼動したとしても、今後の50〜100年程度では、大気二酸化炭素分圧に対して数十ppm程度の効果しか期待できないというモデル計算結果もある。さらに、その場合、沈降してくる有機物の分解に酸素が消費し尽くされ、深海のかなりの部分が還元的な環境になる可能性が指摘されている。

 

3] サンゴ礁活性化

サンゴの生育には海水温が高いことと、海底が浅いことが必要であり、また一方で、淡水やシルトの多い海水ではサンゴは生育しない。

 

 

 

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