3] サンゴ礁活性化
サンゴ礁生態系をCO2固定に用いる最大の利点は、サンゴ自体の生物量は全地球的にみても非常に少ないが、単位面積当たりの生産量が森林に匹敵し、また貧栄養海域においても高い生産性を示していることにある。さらに、サンゴの生育には適切な温度と塩濃度を調整する必要があるが、これらの条件さえかなえれば、サンゴの増殖そのものは技術的にそれほど難しいことではないと考えられる。
4] バイオリアクター
地球環境産業技術研究機構(RITE)では、太陽光を集め、バイオリアクター中で様々な植物プランクトンを培養して、工場から出るCO2を生物的に処理するシステムの開発が研究されている。海や温泉から比較的CO2吸収速度の速いプランクトンが探索され、太陽光を効率よく集光するシステムが作られ、同化作用を促進する装置の開発が行われている。さらに、栄養塩の豊富な深層水を汲み上げて、地上で植物プランクトンを増やす方法も考えられている。
(4) 内外の研究状況
1] CO2の海洋処分
CO2の海洋処分については、その実現可能性を評価するための研究プログラムが1997年12月より始まり、我が国の他に、米国、ノルウェー、カナダ、オーストラリアなどがスポンサーとなっている。この研究プログラムの一環として、2001年の夏に、ハワイ島西岸の約800mの深度において、CO2海洋処分のフィールド実験が行われる予定である。実験では、約2週間の期間に、50〜100トンのCO2が注入され、CO2の溶解と輸送についての定量的データの収集が行われる。
これに対して、ノルウェーではすでにCO2の地中処分が行われている。北海のスレイプナー天然ガス田では、産出ガスに9.5%のCO2が含まれているため、ガス中のCO2含有率が2.5%以下になるように、余分のCO2がアミン吸収法により回収されている。CO2回収量は年間100万トンにも達するので、大気中に放出するとノルウェーのCO2排出量を3%増加させることとなる。そこで、ノルウェーでは1996年より、CO2の地中処分として、地下800mの深度の帯水層に回収したCO2が圧入されている。
2] 鉄散布
米国が中心となり、すでにガラパゴス島周辺の実海域での鉄散布実験が行われている。1993年にMoss Landing Marine Laboratoriesにより実施された鉄散布実験(IronEx I)では、太平洋赤道付近の64km2の海域に、溶存鉄濃度が4nMとなるまで鉄が散布された。結果的に、植物プランクトンの量と生産速度がかなり増加したが、硝酸塩濃度およびCO2分圧についてはほとんど影響がみられなかった。