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一方、石油貯留層への炭酸ガスの圧入は非常に合理的な方法であるが、地域が極めて限定されてしまう。これは、油田やガス田を利用する方法についても同様であり、我が国では、これらの処分方法の適用はほとんど望めそうにない。我が国においても有望なCO2を帯水層に処分する方法は、CO2が水に比較的よく溶解するという性質を利用するもので、適切な帯水層があれば比較的多量の処分が期待できる。

 

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図6.2.4-2 天然ガス層・帯水層へのCO2の圧入とメタンの回収

(出典:黒田千秋、宝田恭之「地球環境問題に挑戦する」(1997))

 

2] 鉄散布

海洋には、硝酸やリン酸といった主要栄養素が多量に含まれているにもかかわらず、生物生産性の低い海域が存在する。南極海などがその例である。このような海域では、生物活動に必須である微量栄養素の鉄が不足しており、そのため生物生産が活発でないと考えられている。そこで、このような海域に鉄を散布することにより生物生産を活発化させ、CO2を固定する方法が研究されている。

南極海への20万トンの鉄の散布により、最大20億トンの炭素を余分に吸収でき、それに要する費用は10億ドルであるとする試算がなされている。この炭素吸収量は、化石燃料起源のCO2量57億トン(1989年)の約3分の1に相当し、費用はCO2処理コスト1tCにつき50セント(約60円)となる。一桁程度の誤差であればCO2の処理方法として十分通用する。

 

 

 

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