3.6 地球環境維持
3.6.1 大気-海洋-沿岸域システムの観測
(1) 概要
漁業・水産業において、魚群の分布・回遊に関する情報を的確に把握することは、合理的な水産資源管理や効率的な漁業操業にとって有効である。これらの海況に関する情報は、主として船舶により収集されているのが現状である。このようにして得られた情報は詳細であり多面的ではあるが、観測範囲や時間的連続調査が制限されている。そこで、船舶による観測と並行して、広域観測や時間的連続調査が可能な衛星・航空機からのリモートセンシングが有用な技術として注目されている。現在のリモートセンシング技術では、魚群を直接見ることはできないが、漁場のできやすい環境を把握することは可能である。
(2) 技術の現状
人工衛星に搭載される観測センサーは、可視・近赤外域から、熱赤外域、マイクロ波域までの波長域をもつ。可視・近赤外域センサーでは、海面または水中からの反射率の違いから、水色、濁度、海氷分布などの情報が、熱赤外域センサーでは、海面からの熱放射を観測して海表面温度分布、海氷分布などが観測できる。これらは受動型センサーと呼ばれる。マイクロ波センサーは、受動型センサーだけでなく、センサーから電磁波を発し、その電磁波に対する対象物の散乱強度を観測する能動型センサーが含まれる。能動型センサーを用いることにより、海面高度、海上風、海面粗度が観測できる。マイクロ波による塩分分布は将来的な課題である。受動型センサーを用いて、熱赤外域と同様に海表面温度分布、海氷分布などが観測できる。表3.6.1-1に、マイクロ波リモートセンシングのセンサーの種類と観測対象を示す。また、表3.6.1-2に、衛星によるデータの長所および短所を示す。