米国では、関連化合物が合成され、殺虫剤として実用化されている。これは、海洋天然物が実用化された最初の例として有名である。
一方、海綿や海の藻類からも新しい化合物が抽出されて、これを農薬や殺虫剤のようなものに活用する方法が模索されている。
b. 植物ホルモン
植物ホルモンは、組織培養した植物の一部を元の植物全体に戻したり、出芽率を上げる際に有効に作用する。海の藻類の中でシネコッカスという植物プランクトン中の植物ホルモンは、通常の植物ホルモンに対して、7倍近く再生率を上げることが確認されている。シネコッカスからエキスを抽出して植物を再生させると、何も入れないものでは約30%しか元の植物に戻らないが、約60%が元の植物に戻るようになった。この技術は、現在、ぺんてる株式会社でランの栽培に利用されている。シネコッカスは、朝鮮ニンジンの栽培などにも応用されている。
5] 生物洗剤
ビブリオアルギノリティカスというものから取れたプロテアーゼは、タンパク質の分解度が非常に強く、逆浸透膜という水をきれいにする膜の分解に利用すると効果を発揮することが判明している。この分解酵素を用いることにより、従来よりも強力な洗剤ができる可能性がある。ハロゲンを含む有機化合物を分解する酵素としては、ハロパーオキシダーゼがある。
6] 食品
シャコ貝は、共生している藻類が光合成により作り出した有機物をえさとすることにより、周囲にえさがなくても成長することが可能である。このシャコ貝を養殖して食べる試みが始まっている。
一方で、深層水は硝酸イオンおよびリン酸イオンが濃縮されている海水であり、微生物が少なく清浄なことから、処理することなしに実際に養殖などへ応用されている。深層水は、サケ、ヒラメ、アワビなどの魚介類の養殖やジャイアントケルプ(コンブ)、ノリの培養などにに直接供給されている。特にノリの培養では、深層水を用いることにより、バイオマスが1日当たり40〜45%増加することが報告されている。
7] バイオワクチン
養殖魚に対して、ドラッグ・デリバリー・システムで成長ホルモンを高分子の中に入れることにより、養殖を容易にする試みが行われている。