最近では、綿状のキチンを用いた臨床応用例も報告されている。
g. 動物治療薬
キトサンが動物治療薬として使われ始めている。「キトファィン S」がそれで、犬の細菌感染(黄色ブドウ球菌)による膿瘍に対してキトサンを投与した実験では、抗生物質と同等以上の効果が得られている。
h. 水虫用靴下
キトサンを3〜5μmの微粉末にして繊維に均一に練り込んだ抗菌繊維が作られている。綿と同じセルロースの組成をもったポリノジック(改質レーヨン)の中に、キトサン微粉末が入ったこの繊維は、商品名「キトポリティ」として販売されている。キトポリティ繊維で靴下が作られ、着用試験が実施されているが、むれず、痒くならないことが示されている。これは、水虫の原因となるカビが白癬菌に対して抗菌作用があるからである。
i. アトピー対応肌着
キトポリティ繊維は、綿と比較して、よりソフトな風合いをもたらし、水分を吸収する力、保持する力にすぐれている。このような柔らかさと吸湿性・保湿性を生かした肌着を用いて、アトピー性皮膚炎に対する臨床治療験が行われた結果、皮膚所見においてキトポリティ肌着の着用により71・7%という高い症状の改善率が確認された。この他にも、キトポリティ繊維は、タオル、ハンカチ、カーペット、毛布、ぬいぐるみなどへとその用途が拡大している。
j. 院内感染防止
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌という細菌による院内感染に対して、キトポリティ不繊布を用いて割烹着風のガウンを作り、臨床試験が実施された。病棟内においてどれだけメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が付着するかを測定した結果、従来から着用のポリエステル不繊布によるガウンでは、表側が汚染されると内側もほぼ同数のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出された。これに対して、キトポリティ不繊布によるガウンでは、表側が汚染されても細菌が内側に透過できず、周囲から内部に入り込んでも増殖が抑えられることが確認された。
4] 農薬・殺虫剤
a. 生物農薬
釣りえさ用に使われている環形動物のイソメに含まれるネライストキシンには、ハエを殺すような殺虫効果がある。