b. 重金属吸着剤
キトサンが重金属を吸着する性質を利用して、多孔性ビーズからなる吸着剤の「キトパール」(比表面積がビーズ1g当たり200m2)が市販されている。馬鈴薯工場では、種イモ作りの際に使用する切断刀の消毒液として、殺菌効果の高い塩化第二水銀が用いられていた。これに対して、水銀濃度が50ppmの二次廃液を内径7cm、高さ60cmのキトパール充填カラムで約1日半かけて処理を行ったところ、通過液の水銀濃度は環境基準値をクリヤーできる5ppb以下まで下がることが確認されている。
c. 食品素材としてのキトサン
キチンとキトサンは、ともに食品添加物リストに増粘安定剤として収載されており、クリームなどの増粘剤や保形剤として使われている。また、キトサンは細菌やカビに抵抗性を示すため、漬物の防腐剤や麺類の日持ち向上剤として食品保存料に利用されている。
d. バイオリアクターによる食材の生産
キトサンビーズの粒径0.1〜2mmの範囲のものが製造されている。このビーズに化学処理を行うことにより酸に対して不溶性にしたり、タンパク質などの吸着のさせ方を変える目的から、バリエーションを拡げたものがキトパールである。キトパールに酵素を結合し、いわゆる固定化酵素を作りバイオリアクターとしての利用を試みているものに、低カロリー甘味料や抗う触性甘味料として知られているオリゴ糖の生産がある。細孔径の大きなキトパールのビーズにビール酵母を固定化し、エアリフト型バイオリアクターで1ヶ月間のエチルアルコール連続発酵を実施したところ、ビーズ1l当たり51gのアルコールが得られた。
e. 酒質保全装置
火入れを行わなくなった生酒に対して、発酵の副生成物として尿素ができ、これがカルバミン酸エチルという酒質を損なう物質になる。キトパールのビーズに、尿素分解酵素であるウレアーゼを固定化し、カラムクロマト法で目的の尿素を効率よく吸着除去することができた。
f. 創傷カバー材
キチンは傷口の治癒を早める効果をもつことから、キチンの短繊維を抄紙した「ベスキチン」が創傷カバー材として登場した。火傷に用いれば皮膚の形成が早く、しかも生体との馴染みのよさからケロイドを起こさず、きれいな皮膚が再生できる。