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一方、底泥の中に生息するメイオベントス(線虫や有孔虫など1mm以下、31μm以上のサイズの小型底生生物)を調べるために底泥が採集され、現在、泥中のメイオベントスの分類、計数が行われている。また、海底に酸素の消費量を計測するための呼吸計が設置され、超深海底に生息する小型の生物や微生物の活性がどの程度あるのかを調べるための現場実験も開始された。この呼吸計は1年後に回収して、その結果が解析される予定である。

中深層生物の研究は、米国のモンテレー湾水族館研究所とハーバーブランチ海洋研究所が中心になって進められているが、海洋科学技術センターも、潜水調査船「しんかい2000」、「しんかい6500」や無人探査機「ドルフィン-3K」を用いて研究に着手している。1997年5月から6月にかけて相模湾(水深1200m)、日本海溝(水深6500m)および小笠原水曜海山(1400m)海域で調査が実施された結果、新種と思われる多くの生物が観察されている。また、特別な採集装置を用いることにより、海上からのネットによる採集では壊れてしまうような新種生物の採集に成功している。図3.4.3-1に、中深層海域の調査の結果、観察された新種生物の例を示す。

 

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図3.4.3-1 中深層海域の調査の結果、観察された新種生物の例

(海洋科学技術センターホームページより転載)

(左)日本海溝の深海約6500mにおいて「しんかい6500」の潜航中に撮影された多毛類の新種、(右)小笠原諸島の水曜海山600〜1400mで「しんかい200」の潜航中に観察されたサメハダホウズキイカ類。体内の塩化アンモニウムの量を調節することにより、自分の比重を適切な値に変え、ひれを動かさずに静かに浮くことができる。

 

e. 脊椎動物

これまで魚類の生息が確認された最も深い記録は、南米のプエルトリコ海溝の約8300m地点であるとされている。一方、1960年にチャレンジャー海淵で、体長約30cmのカレイもしくはヒラメの仲問が観察されたという報告もある。そのため、魚類生息水深の最新記録更新の期待があったが、上述のマリアナ海溝の調査では魚類は確認されなかった。

 

 

 

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