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2] 海洋生物の育種

a. 遺伝子組み換え

生物に外来遺伝子を導入し、新たに特定の形質を付与させる技術をトランスジェニック技術と呼ぶ。実際に、成長ホルモン遺伝子の導入により、マウスが巨大化することが確認されている。魚類については、多くの淡水魚類のニジマス、テラピア、ドジョウ、ナマズ、コイ、キンギョ、メダカ、ゼブラフィッシュにおいて、トランスジェニック技術の適用が行われている。しかしながら、海水魚においてトランスジェニック技術が成功しているのはサケだけである。トランスジェニック技術により、全てサケから得られた遺伝子をもとに作成した成長ホルモン関連遺伝子を導入したサケが37倍に巨大化したことが、1995年にデブリンらにより報告されている。図3.4.3-2に、トランスジェニック技術によるサケの巨大化の模式図を示す。

 

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図3.4.3-2 トランスジェニック技術によるサケの巨大化の模式図

(出典:松永是「おもしろいマリンバイオテクノロジーのはなし」(1996))

 

b. 大型藻類の細胞融合

ノリの品種改良において、交雑法では、遠縁の種間で雑種を作ることは非常に困難である。これに対して細胞融合という技術が注目されている。細胞融合とは、細胞間での接合現象を人為的に引き起こし、両方の原形質(細胞から細胞壁を除いた部分)の一体となった一つの細胞を作り上げることである。ノリにおいて、プロトプラスト(原形質体)分離、融合、融合細胞の培養に関する基本的技術はほぼ確立されており、現在までに、細胞融合したノリのプロトプラストを再生したという報告がいくつかなされている。ただし、融合した細胞の培養についての報告は少なく、細胞融合により実用的なノリの雑種を作る段階には達していない。図3.4.3-3に、細胞融合によるノリの改良の流れを示す。

 

 

 

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