深海研究フロンティア研究の第I期では、深海の微生物に焦点が絞られ、分子生物学的手法による研究が行われた。第I期の主な研究成果は、以下のとおりである。
・新しい極限環境微生物の発見/極限環境への適応機構の研究
深海極限環境に生育する微生物から、好圧菌、超好熱菌、好冷菌等が発見された。特に世界最新のマリアナ海溝の海底の泥から、180種類もの微生物が初めて分離された。これらの極限環境に適応するための機構に対して、遺伝子、タンパク質の分子論的立場から、および微生物の生理学的立場から研究が行われた。その結果、圧力が付加されたとき初めて働く遺伝子(圧力プロモーター)や、細胞内液胞のpH調節機能等が発見された。これらの成果に対して、「圧力生理学」という新しい学問分野が世界に先駆けて提唱されている。
・有用微生物の発見と解析
有用微生物として、石油分解菌、酵素や生理活性物質(EPA、DHA)を生産する菌、バイオサーファクタント(界面活性物質)を作る菌などが発見された。これらはまだ実用化には至っていないが、将来応用できる可能性の高い微生物である。
注3)臨界温度および臨界圧力を越えた温度および圧力条件下では、水が気体とも液体ともつかぬ流体の状態となる。深海の熱水噴出口において、超臨界水の存在が期待される。