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図3.4.2-5に、交差板構造の切片の観察画像を示す。

 

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図3.4.2-5 交差板構造の切片の観察画像

(出典:中原皓、日本機械学会誌、97、902、38(1994))

 

4] 海藻紙

a. ホソジュズモ紙

宮城県気仙沼市の市民グループにより、緑藻類のホソジュズモのセルロースをベースとして、陸上植物と同様の方法で紙が作られている。実際には、乾燥海藻に対して25倍の5%苛性ソーダを用いて1時間煮熟し、水洗後、ミキサーで解繊して、トロロアオイの粘剤を用いて手抄きシートを得ている。このようにして製造されたホソジュズモ紙は、海藻特有の粘質多糖を相当量含有しているため、かなりフィルム状に近い。廃液に含まれているクロロフィルが海藻染めに利用されている。

 

b. アルギン酸繊維紙

褐藻の細胞壁からアルギン酸を抽出して、それを繊維状に再構築するレーヨン紙の手法により紙が作られている。褐藻に炭酸ソーダ水を添加して、細胞壁、細胞間物質からアルギン酸をナトリウム塩の形で溶出させる。不溶物からアルギン酸ソーダを濾過等により分別して、酸性に戻すかカルシウム塩の形で再沈殿させて精製する。このようにして得られたアルギン酸ソーダ塩から、湿式紡糸法によりアルジネートレーヨン繊維を作る。この繊維を短繊維に切断し、水に分散させた後、抄紙を行う。得られた湿紙をゆっくり乾燥させると、乾燥と同時に繊維間結合が形成されてアルギン酸繊維紙ができる。

アルギン酸繊維紙は、アルギン酸のもつ性質と紙のもつ性質の相乗効果が期待されるため、様々な応用分野が考えられている。例えば、アルギン酸は止血性を有しているので、創傷被覆材(人工皮膚)としての応用が想定され、現在臨床試験まで進んでいる。

一方で、アルギン酸繊維紙は、通常のセルロース繊維紙に代わる音響振動板材料としても注目されている。

 

 

 

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