(出典:中原皓、日本機械学会誌、97、902、38(1994))
一方、自動車の表面のセラミックのコーティングは、これまでコストのかかる高温高圧条件下で行われていた。これに対して、バイオセラミックコーティングというアイディアがある。これは、真珠の生成メカニズムなど、海の生物をモデルにしたコーティング技術である。
c. 交差板構造
多くの貝殻は真珠光沢を持たず、磁器光沢がみられるが、これらの大部分は交差板構造を示している。交差板構造も真珠層と同様にアラゴナイトで構成されるが、真珠層に比べると含有有機質の量が重量比で0.8〜0.0l%とはるかに少ない。交差板構造では、アラゴナイトの細長い結晶が、一定の角度で交互に配列している。その結果、交差板構造は一種のベニヤ板のような積層構造を有している。交差板構造により、真珠層のような有機質の枠組みをほとんど用いていないにもかかわらず、アラゴナイトのもろく割れやすい結晶だけで比較的強固な構造が生み出されている。このような交差板構造は、真珠層のさらに進化の進んだ構造とみることができる。