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真珠層の主成分はアラゴナイトであり、約5%の有機質を含んでいる。個々のアラゴナイトは、0.3〜0.8μm、平均0.5μmの厚さの板状結晶である。真珠層特有の光沢は、多層の板状結晶からの反射光の干渉に起因する。真珠層は、板状結晶の間に挟まれた、層間基質と呼ばれる約40nmの薄いシート状の有機質の層が存在する。酸等によりアラゴナイトを溶解させた後も有機質の構造はほぼ残り、また結晶と有機質部分の接着状態も良いことから、わずか5%の成分ではあるが、有機質構造が真珠層の構造強化に大きく寄与していると考えられる。このような真珠層における板状結晶と介在するシート状有機物により作られる構造は、強靱性と緻密さを備えた、外骨格としての理想的な材料と考えられる。

 

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図3.4.2-4 アコヤガイ真珠層の成長表面の切片の観察画像

(出典:中原皓、日本機械学会誌、97、902、38(1994))

 

一方、自動車の表面のセラミックのコーティングは、これまでコストのかかる高温高圧条件下で行われていた。これに対して、バイオセラミックコーティングというアイディアがある。これは、真珠の生成メカニズムなど、海の生物をモデルにしたコーティング技術である。

 

c. 交差板構造

多くの貝殻は真珠光沢を持たず、磁器光沢がみられるが、これらの大部分は交差板構造を示している。交差板構造も真珠層と同様にアラゴナイトで構成されるが、真珠層に比べると含有有機質の量が重量比で0.8〜0.0l%とはるかに少ない。交差板構造では、アラゴナイトの細長い結晶が、一定の角度で交互に配列している。その結果、交差板構造は一種のベニヤ板のような積層構造を有している。交差板構造により、真珠層のような有機質の枠組みをほとんど用いていないにもかかわらず、アラゴナイトのもろく割れやすい結晶だけで比較的強固な構造が生み出されている。このような交差板構造は、真珠層のさらに進化の進んだ構造とみることができる。

 

 

 

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