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東京湾における底生生物等による底質環境の統一的評価方法

東京都環境科学研究所 木村賢史

 

1 はじめに

東京湾の水質改善には流入負荷量の削減とともに湾内の底質改善も大きな課題の1つである。底質改善には覆砂、浚渫、浅場の修復・再生等の対策が必要となるが、効果的に実施するためには水域の評価・選定が重要となる。そこで、筆者は底生動物の種類数、甲殻類比率、DO、IL、シルト・粘土分の5項目から成る底質環境の評価基準を作成したが、この評価基準を東京湾岸の七都県市底質改善WGでさらに検討し、統一の評価基準(表1)をまとめた。評価は、底質環境を概ね総合的に反映していると言われる底生生物を評価項目の中心に据え、その根拠となる数値や指標底生生物は過去15年間にわたり各都県市等が行なった底生生物等の調査データから、生物の分布、経年変化、生息環境条件について解析し求めた。

2 評価区分の設定

底質環境の状況を具体的に評価するため5段階に区分した。すなわち、多様な生物が生息し、底質が砂質で好気的なもっとも良い環境をIV、溶存酸素がほとんどなく、生物は生息せず、底質は黒色でヘドロ状の最も悪い環境を0として、間をIII、II、Iの3区分に分割した。また、それぞれの区分について、具体的な海底のイメージを表すこととした(表2)。

3 評価の項目

底生生物の出現種類数、甲殻類の比率、底質の有機物、優占指標生物の4評価項目について、5ランクに分け評点を定め、各地点の評点の合計から底質環境の評価を行う。

底質環境の評価には生物の種類、個体数、多様性、底質の状況、有機物の量、底層水の溶存酸素の有無などが重要である。生物の種類数が多いということは、当該環境が多様な生物を生息させるための条件を有していることであり、一般的には良好な環境といえるが、より正確に評価するためには種類数の内訳が重要となる。種類数が多くても有機汚染に強い多毛類が多くを占めていたのでは良好な環境とはいえない。

そこで、甲殻類の種類数の比率を評価項目にいれることにした。甲殻類は一般に好気的な環境、砂質を好み、底質環境の良好な水域において甲殻類の比率が高いといわれている。また、底生生物からの評価という視点から過去15年間のデータを基に優占指標生物を評価項目に加えた。ここでの優占指標種は、東京湾において出現頻度の高い生物から選出したが、東京湾が富栄養化している現状を反映して汚濁に比較的耐性のある種が中心となっている。さらに、底生生物の生息環境要因の1つとして底質の有機汚染の度合いを示す強熱減量を評価項目に加えた。

4評価項目以外に底層水の溶存酸素、シルト・粘土の割合などについても検討を行った。その結果、1]底層水の溶存酸素の有無と生物の生存は密接な関係があること、2]ただし、台風等の気象の影響、青潮の発生などにより、溶存酸素は大きく変動する場合があること、3]シルト・粘土の割合は底質の強熱減量と相関があることなどの理由から、出現種類数、甲殻類の比率、底質の有機物、優占指標生物の4評価項目で、底質環境を評価することができるものと考えた。

 

 

 

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