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このヨシ原では、ヨシの年間栄養塩取り込み量と比べ、Nでは約半分、Pでは1.5〜3.5倍の堆積貯留量となった。沈降促進作用の水理機構を水路実験により解析した。茎に対し円柱粗度を初期値として与え、水位、流速、抗力係数を繰り返し計算により同時に解くことで、低レイノルズ数のヨシ原内流れを求めることができた。沈降速度を与えることでヨシ原周辺での粒子挙動が算定できるようになった。毎秋枯れヨシを刈り取らずとも、ヨシ原の存在自体で栄養塩の貯留効果があることがわかった。

II-2 二枚貝による粒状有機物の濾別作用を検討した。室内実験から個体の能力を求め、その上で、現地の生息状況観察から場所の能力を算定した。閉鎖性内湾での典型種から、護岸壁等に密生しているムラサキイガイと干潟によく見られるアサリを選んだ。成体の濾過速度は、両者類似の値であった。生息密度などを考慮し1日当たり場所当たりの見かけ濾過速度を算出すると、ムラサキイガイの生息する直立護岸壁で50-100 m3/m2/d、アサリの生息する干潟で1-2 m3/m2/dとなる。しかし、生息範囲を考慮すると、干潟面におけるアサリの生息範囲は沖合い1kmほどにも及び、沿岸の水際線幅1m当たりの濾過速度としては、直立護岸に比べ干潟で1桁大きくなり、1-2×103m3/m程度となった。

II-3 礫表面の付着微生物膜などによる海水中の懸濁成分の除去の機構を、水路実験により検討した。長さ30mの水路に礫を積み、東京湾奥の運河部海水を流下させた。海水でも1ヶ月目から生物膜の形成が確認され、SSの良好な除去が見られた。有機物の除去率は概ね1〜3割程度と少ないが、生物膜の酸素消費が継続して認められた。水路内の滞留時間が長いとSSの除去効率は向上し、4時間では概ね6〜8割程度に達した。濁りの除去総量では滞留時間が短いほど大きく、滞留時間1時間(流量360m3/d、間隙流速1.7cm/s)では1.8kg/dとなった。このときの除去効率は5〜7割であった。大量の海水を引き受けた方が、沖合い海域の懸濁物除去には寄与が大きい。

 

III. 自然の浄化作用は、浄化にあずかる個々の生物個体の生理的能力向上よりも、生息場所の拡大、接触水量の増加、生息環境の改善などの努力により促進強化されやすい。といった浄化能力向上方策の原則がありそうである(表-1)。

 

 

 

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