平成11年8月19日
S&O.F.沿岸海洋における海洋環境改善技術に関する調査研究委員会
自然浄化促進の技術
運輸省港湾技術研究所 細川恭史
要録
I. 自然浄化能強化の方策を整理する。閉鎖的モデル内湾を例に、自浄作用と水理的な海水の交換とを同時に考慮した簡易な式を提示し、それぞれの役割を比較する。閉鎖的内湾域全体では海水交換と自浄作用とは同じ程度に水質に寄与していること、外海水との交換が極めて悪い湾奥部ほど浄化作用がより重要になってくること、等が解る。
II. 湾奥沿岸汀線部でよく見られる典型生物からサイズの異なる3種を選び、
1]ヨシの栄養塩貯留とヨシ原の粒状物の捕捉作用、
2]二枚貝の生物濾過作用、
3]石積み間隙における粒状物の沈降捕捉と生物膜の接触酸化作用、
について、浄化能の高い場所づくりや海域の構造物への浄化機能付加の観点から検討した。
II-1 ヨシに関しては、室内栽培実験・三浦半島のヨシ原における現地観察・および水理実験や数値モデルにより検討した。早い成長により、春先から夏の終わりにかけ、大きな栄養塩吸収が見られた。成長期の平均で、窒素(N)で1.2 mg/shoot/d、Pで0.1 mg/shoot/dの取り込み速度であった。アンモニア態窒素の選好吸収傾向と、塩分阻害の起きる濃度を見いだした。ヨシ原面積当たり、Nで1.4 kg/ha/d、Pで0.1 kg/ha/dといった能力であった。枯死後の栄養塩の海への回帰は、Nに関しては、含有量の約2割を2ヶ月間で溶出させる初期溶出の後ゆっくりとした2次溶出が始まり、その速度値は1-3 mg/shoot/dと取り込み速度の1〜3割程度であった。茎が直立して生えていることによる微細粒子の沈降促進作用を検証した。航空写真により25年間の土砂堆積の大きさを見積もり、栄養塩含有量から栄養塩貯留量を推定した。