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5. 今後の課題

 

5.1 総合的な取り組み体制の確立とガイドラインの策定

 

我が国における環境改善策は、どちらかと言えば対症療法的に、即効性の高さを重視して実施されてきた。しかし、汚濁を根本的に改善するためには即効性の高さからだけではなく、より広域的、長期的な視点で生物の浄化−生産機能を復元、強化し、自然の物質循環システムを修復することが重要である。

これまで各方面で開発されてきた干潟や浅場、藻場などの創出技術は、多様な生物に新たな生息場を提供するものであり、生物の浄化−生産機能を直接的に強化し得る技術として有効である。また、覆砂、浚渫などの物理的な技術も、貧酸素などによる生物の死滅を防ぐことにより、生物機能を間接的に復元することができる。しかし、広域的な循環システム全体を修復するためには、単一の技術や単独の事業を個別に展開しても大きな効果は期待できず、広域的な改善計画のもとに、複数の事業主体が協力し、複数の技術を適用しながら長期的に取り組むことが不可欠である。

米国のチェサピーク湾、タンパ湾、サンフランシスコ湾で行われている環境修復プロジェクトは、いずれも流域や空域までを含めた広域的な修復計画となっているのが特徴である。また、計画策定はチェサピーク湾プログラム、水資源管理局(タンパ湾)、サンフランシスコ湾保全開発委員会などの組織のもとで、総合的かつ体系的に取り組まれている。我が国の改善策では、個々の技術の開発や適用が先に立つ傾向が強く、循環システム全体の修復に向けて広域的、長期的に取り組むまでには至っていない場合が多い。今後は総合的な取り組み体制のもと、広域的かつ長期的な改善計画を策定するとともに、その中に個別の事業を位置づけ、実施していくことが重要である。また、そのような計画策定、個々の技術の適用手順等に関する適切なガイドラインの策定が望まれる。

 

 

 

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