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4.5 まとめ

 

米国における3つの代表的な閉鎖性海湾における環境修復への取り組みは、様々な行政、研究機関が協力し、膨大な情報を丁寧に解析し、利用していることがうかがえた。環境修復の考え方、取り組み方に共通し、我が国における環境改善事業の進め方にも取り入れることができる内容は、わかりやすい目標を定め、自然の力を利用して、できることから着手すること。環境情報は継続的に取得し、地理情報システムなどを活用したデータベースを利用し、広く公開すること。環境問題に対しては一部の行政、研究者のみならず市民と協力し、日常の教育が重要であること等、下記に示す取り組みが特徴的である。

1]具体的な環境修復計画

モニタリング結果などに基づく過去や現状の的確な分析を踏まえて測定可能な分かりやすい目標を具体的に設定している。

2]実践的なアプローチ

特にタンパ湾の例に見られるように、身近なところから実践することを基本としている。

3]水質、水資源の管理から生物資源、生物多様性の管理へ

地理情報システムを利用したデータベースを整備し、生物生息場に関する情報管理に力点が置かれている。

4]広域的管理とモニタリング

対象海湾や流入河川のみならず、流域(watershed)や空域(airshed)を含めた広域的なアプローチが基本となっている。

5]近自然型の環境修復

潮汐エネルギーの利用、藻場やカキ棚の発達による物理的要因の制御、感潮域の復元等自然の機能を生かした近自然型の修復計画が中心となってきている。

6]環境モニタリングシステムの確立

環境の現状診断や修復効果などの評価のためのモニタリングの体制が整備され、さらにそのネットワーク化がはかられている。

7]環境教育や市民との連携

修復事業に市民各層が参画することによって、環境教育の役割を果たしていること、またそのために情報の公開や市民への広報サービスが進んでいる。

 

 

 

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