一方、効果の持続性については、海藻草類の生育が安定し、生態系が順調に形成されれば高いものと考えられる。しかし、栄養塩を吸収した海藻草類がその場で枯死、分解して再び水中に戻るようであれば、栄養塩類の浄化機能としては一時的なものにしかならない。動物についても同様であり、より効果的な環境改善のためには、生物体が系外へ移動あるいは漁獲されることが望ましい。
また、海藻草類の栄養塩吸収速度、酸素放出速度については室内実験等から推定可能であるが、藻場全体でみた食物連鎖や物質収支の構造は複雑で不確実な要素が多い。そのため、生態系全体でみた浄化能力についての評価や予測は困難であり、環境改善技術として適用するにあたっての大きな課題と言える。
藻場造成による環境改善のメカニズムを模式的に図-3.1.8に示し、改善される内容と技術の長所、問題点、課題を以下に整理した。
■改善内容
・海藻草類が水中の栄養塩を吸収する(水中の栄養塩量の削減)。
・海藻草類が光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する(DOの供給)。
・海藻草類の体は水中の懸濁物を捕捉、沈降させる働きを持つため、水中の有機物を藻場内に捕捉する。さらに、藻場内の底生動物、魚類がこれらを餌として取り込む(水中の有機物量の削減)。
・藻場内で索餌した魚類の系外への移動、流れ藻など、生物体の移動によって物質が系外へ運び出される(物質の系外への移出)。
■改善技術としての長所
・浄化能力の高い安定した生態系を形成することができれば、持続的に環境改善を行うことができる。
・生物の生息・生産場としての価値も付加される。
■問題点・課題
・生態系全体でみた浄化能力についての評価や予測が困難。
・効果的な改善のためには、生産された生物体が漁獲等によって陸域に取り上げられることが望ましい。