(5)藻場造成
藻場は魚介類の産卵場、餌場、幼稚仔の成育場になるため、造成事業は水産生物の増殖など海中の生物生産機能の向上を目的として数多く実施されてきた(関西国際空港、北海道様似港、大分県小江湾、横須賀市佐島地先ほか)。一方、海藻草類には水中の栄養塩を吸収する働きがあり、また、海藻類を基盤として生息する動物には摂餌活動による有機物の取り込みが期待される。また、生物生産機能の向上によって広域的な環境改善にも寄与すると考えられるため、藻場造成は環境改善技術としても適用可能と考えられる。
藻場造成による環境改善は、生息する生物や生態系の機能に依存したものであるため、即効性は必ずしも期待できない。海藻草類による栄養塩の吸収、酸素の供給作用に着目すると、草体を直接植え付ける方法で造成する場合には比較的早い時期からの効果がみこめるが、播種等による場合には、発芽し草体が成長を始めるまでは大きな効果は期待できない。また、藻場内の動物の摂食による浄化効果では食物連鎖系が形成されるまで待たなければならず、造成直後からの効果を期待するのは難しい。伊方原子力発電所の事例(石積みによるマウンドの造成)では、施工後3年で周囲の天然岩礁と同様のクロメを主体とする藻場が形成され、魚類や貝類などが生息するようになったことが報告されている(港湾環境創造研究会、1997)。