程度の違いはあるが、各海湾とも流入負荷が増加し、逆に生物機能は低下する傾向を示していることがわかる。各海湾とも負荷の削減が必要であることはいうまでもないが、もともと浅場面積が相対的に広い三河湾や東京湾では、生物の生息可能な浅海域を確保するために、浅海域の修復と貧酸素水塊の浅海域への影響を回避する対策を組み合わせ、全体的に生物機能を高めることが当面の方向性として現実的と考えられる。一方、浅場面積が小さい大阪湾や伊勢湾では、浅海域を増やし生物生産を向上させる努力を否定するものではないが、むしろ湾内底層に広く生息している底生生物の生息環境を改善することが効果的であり、貧酸素水塊の原因となる底泥の改善等が優先課題であろう。なお、有明海では流入負荷の増加傾向は他の海湾と比べて顕著でないものの、浅場面積の比率は減少する傾向をみせており、今後はそうした点に注意が必要である。