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[検討結果の概略]

<1]代表4海湾における干潟の分布状況と変遷>

・干潟の面積は、有明海が約21,000haと大きく、次いで、東京湾、伊勢湾、三河湾がほぼ同じ1,500ha程度で、大阪湾は約15haと非常に少ない。

・干潟の減少率は東京湾で80%以上、伊勢湾、三河湾で50%程度と大きく、干潟・浅場での浄化機能が低下していることが伺える。有明海は減少率が20%程度と低いが、消失面積でみると東京湾に次いで大きい。また、大阪湾はもともと干潟が少ない海湾であった。なお、消滅理由は埋立て、干拓、浚渫等であった。

・東京湾、伊勢湾、大阪湾では近年、人工干潟の造成で干潟面積は増加している。

 

<2]既往知見による浄化量の試算>

・有機物浄化量は底生動物の現存量の高い有明海内の大牟田で最も高く、東京湾内の人工干潟である葛西人工海浜で低い結果が得られた。

・盤洲干潟、三番瀬、木曽三川河口、小鈴谷、一色干潟では底生動物の現存量に差があるものの、軟体類と多毛類等の組成比の違いにより、有機物浄化量はほぼ同じレベル(400〜585g/m2年)であった。

 

<3]干潟の底生動物相と生息環境との関係>

主な干潟(盤洲干潟、三番瀬、葛西人工海浜、木曽川河口、知多半島小鈴谷、一色干潟、有明海大牟田)の状況をみることで生物が多く生息し、高い浄化量が得られる干潟の環境は以下のとおりである。

・勾配がゆるやかで安定している。すなわち、波浪等の物理的な影響を受けにくい場所であること。

・貧酸素の影響を受けずに生物の死滅がないこと。

・底質CODがある程度高いこと。すなわち、河川等の負荷源があり、ゴカイ等の干潟に生息する底生動物に安定して餌料を供給でき、生物生産が維持されていること。

 

以上のことから、干潟の持つ機能のうち水質浄化機能は、それぞれの干潟で生物の現存量や生物の構成が異なるものの単位面積あたりの浄化量に大きな差はみられなかった。干潟での浄化量を流入負荷と比較すると、東京湾では有機物浄化量が年間約8,800tと試算され、CODの流入負荷量105,000t/年の約8%を占め、生物による栄養物質の取り込みは湾内の水質浄化に大きく寄与していることが伺える。しかし、東京湾や三河湾の湾奥部に位置する干潟や浅場は貧酸素水塊や青潮(苦潮)の影響を受けやすく、生物による浄化機能が低下しやすい状態にある。

 

 

 

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