(1)干潟・浅場
1)機能
干潟・浅場の機能は、以下のように分類される((財)港湾空間高度化センター、1998a)。
1]生物生息機能
2]水質浄化機能
3]生物生産機能
4]親水機能
このうち、2]水質浄化機能は、以下のように分類される。
a.物質を干潟内で一時的に安定な形で貯留する作用
・砂泥層への海水中の懸濁物質の沈降及び砂泥層を通過する際のろ過
・生物による海水中の栄養塩、有機物の吸収・取り込み
(底生藻類、アマモ・アオサ等の海藻草類、塩性植物群落、底生動物 等)
b.物質を干潟の系外に運び出す作用
・砂泥層の微生物による有機物の分解、無機化、脱窒作用
・底生動物の呼吸による有機物の分解、無機化
・干潟を餌場とする鳥類、魚介類の移動に伴う物質の移出
・貝類、海藻類の採取による物質の移出
これらの浄化機能のうち、以下の作業では、干潟での現存量や浄化量が大きく、かつ継続的浄化に貢献できる底生動物による浄化機能について検討を進める。
干潟の底生動物は水質・底質の浄化に対して以下のことが言われている(木村、1997)。
1]移動性に乏しく、かつ多量に発生するため当該水域で安定した浄化に寄与している。
(事例1. [運輸省]自然の砂浜や干潟1m2あたりの有機懸濁物浄化量を浄化要因別に調べた結果によると、底生動物を主とした生物消費が80〜90%を占め、圧倒的に浄化に寄与していたと解析。
(事例2. [環境庁]呼吸による有機物の分解という視点から、稲毛砂浜等の浄化能を調査した結果、浄化寄与率は主に底生動物と考えられる動物が50〜90%、海藻が1〜30%、プランクトン1〜20%、微小藻類4〜10%と砂浜でも底生動物が浄化に果たす役割が大きいとしている。