また、栄養物質の系外への除去という観点からは、漁獲の他に鳥類などによる採餌の効果も大きいと考えられる。鳥類の採餌量を海湾規模で集計した報告は見あたらないが、三番瀬の調査(1998、千葉県土木部、千葉県企業庁)では、デトリタス食性のゴカイ類を採餌するシギ・チドリ類は年間18.5t、ろ過食性のアサリ、ホトトギスガイなどを採餌するスズガモは年間約9,000tを捕食していると推定されている。東京湾のアサリ類の漁獲量が約9,000tであることから鳥類による系外への除去効果が漁獲に匹敵するか、もしくはそれを上回っていることがうかがえる。また、堆積有機物の除去にも効果があることがわかる。
このように、流入負荷が海域生物の食物連鎖の中で一時的に生物体に貯留され、これを漁獲によって系外へ除去する流れや、沈降堆積した有機物を底生生物が取り込み、これを漁獲や鳥類の採餌によって系外へ除去する流れを円滑に維持することが、水質浄化効果を高めることになると考えられる。
3]生物の生息を脅かす汚濁状況の把握
代表的な4海湾において生物の生息を脅かす主な汚濁要因として、夏季を中心に発生する貧酸素水塊、青潮、赤潮やこれまでの汚濁物質の蓄積による底質悪化があげられる。これらの汚濁の主な原因には、海湾地形、流入負荷の集中、流れの停滞、海水交換など海湾の物理的特性、成層構造の発達、淡水流入量の増加などその季節変化、これまでに蓄積されてきた汚濁物質量、埋立て、港湾利用、掘削など人為的なものなどが様々に関係していると考えられる。