汚濁の原因となる流入負荷の大きさと湾内の水質の状況を比較すると、湾容量に対する負荷量の割合(表-2.1.1の5])は、東京湾で大きく、次いで伊勢湾、大阪湾、三河湾の順で、有明海で小さい。これに対し、湾内の水質(6]COD濃度)は三河湾、東京湾、大阪湾で高く、伊勢湾、有明海で比較的小さい。特に、三河湾は負荷量の割合に対し、汚濁が進んでいることから、汚濁の原因として流入負荷以外に海水交換や生物による浄化機能の低下などの要因が関与しているものと考えられる。
次に、淡水流入量が各湾の容量に占める割合(8])をみると、伊勢湾、三河湾で多く、大阪湾で小さい。また、湾内の潮位差(9])は有明海で大きく、大阪湾で小さい。また、成層の弱い有明海を除く各海湾の躍層水深(10])は5〜10m程度であり、平均水深と比較すると(11])、水深の浅い三河湾では下層の貧酸素水塊が躍層の直下に分布しているため、浅海域にその影響が及びやすいことがわかる。
注1) 湾内平均COD濃度は、平成7〜9年の湾中央部の平均値
2) 淡水流入量は各海湾に流入する一級河川の年平均流量の合計値
3) 有明海は成層構造が発達しにくいことから躍層水深の項は除外した
2]生物生息場の状況の把握
海湾に流入した負荷は、プランクトン等の生物に利用され、食物網の中でより高次の生物に取り込まれている。ここでは、生物の生息場であり、生物生産の高い干潟、浅場の状況と取り込まれた栄養物質の系外への除去という観点から漁獲や鳥類による取り上げについて検討した。なお、各海湾における干潟・浅場、藻場等の現状と変遷、浄化機能等の詳細については、「2.2 生物機能の現状と役割」で別途整理したので参照していただきたい。