重み係数は、ヨーロッパからわが国までの航海を想定し、この中における氷中航行(カラ海峡とベーリング海の間)と開水中航行(カラ海峡とヨーロッパ及びベーリング海と日本)にかかる時間の見積もり、氷中における各性能の重要性等を勘案して決定した。評価対象の船型は、A-a、A-b、B-a、C-a、A-d、B-d、D-a、D-d、Dr-dの9船型とし、実験結果から直接の評価ができない船型については類似船型の結果から評価した。
評価結果を表A-5に示す。この方式で評価した場合、最も総合評点が高い船型は、Dr-d船型である。これは、氷中操縦性能をはじめとする氷中性能の良さを反映したものである。開水中性能の低さを氷中性能が補った結果となっているが、この評価において氷中性能を比較的重視した結果とも言えよう。これとは逆に、C-a船型は開水中性能の評価は高いが、氷中性能の低さが総合評点の低い原因となっていると言えよう。
表A-5に示した結果に基づき、Dr-d船型をNSR沿岸域での航行を想定した氷海商船として最も有利な船型であるとして、最適船の検討を行った。図A-15に本船の氷中並びに平水中での性能を示す。主機の常用出力をその最大出力24,000馬力の85%、また、シーマージンを15%とすると、平水中の到達速度は18.1ノットと推定される。また、平坦氷中では、同じく最大出力の85%出力において1.2mの厚さの氷板を3.3ノットで連続砕氷が可能であると推定される。