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平坦氷中における旋回試験結果を図A-13に示す。同図には新船型の結果に併せて船首A及び船首Bによる結果も示す。図よりリーマー付き船首を備えたDr-d船型の旋回性能が最も良いことが判る。また、船型A-aと船型A-dを比較すると船尾の違いが旋回性能に与える効果も判る。リーマー及びS.S.1/2〜S.S.3までの喫水線近傍の肋骨線傾斜を傾斜させ並行部を短くした船尾dとの相乗効果によりDr-d船型の旋回性能が高まったものである。なお、従来船型では船首Aと船首C(図中では略)の旋回性能はほぼ同等であり、船首Bは旋回性能が劣る。

船首Drの氷丘脈突破に要するエネルギーは船首Aとほぼ同等のものとなった。

平水中の試験結果より所要馬力の計算を行った(図A-14)。リーマー付き船型Dr-dの所要馬力は、従来の3船首による馬力に比べて高い。平水中抵抗試験から求めた形状係数はDr-d船型が最も高く、これが所要馬力が高くなった要因である。形状係数の増加は、一つには船体後半部の排水量分布の差によるものである。また、今回の実験では直接の確認はしていないが、リーマー後縁での流れの剥離もこの一因と考えられる。この点を考慮してリーマー後縁の傾き、形状等について詳細設計を行うことにより、リーマー付き船型Dr-dの所要馬力はある程度改善できるものと考えられる。

 

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図A-13 平坦氷中における旋回試験結果

 

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図A-14 平水中における所要馬力

 

1.5 船型の評価

以上の試験結果をまとめて、各船型についての評価を行った。このような評価は、各船型の性能に対するデータをもとに本書4.4節に示したような航行シミュレーションにより行うことが最も望ましい。しかしながら、本研究の実施時点では、環境データ、特にNSR上における氷況の詳細に関するデータが未整備であったため、このようなシミュレーションは実行できなかった。このため、定性的に各船型の評価を行うことを試みた。

評価項目としては、平坦氷中航行性能、平坦氷中操縦性能、氷丘脈突破性能、平水中推進性能及び波浪中性能の5項目とした。それぞれの項目について、試験結果より各船型を5段階得点により評価した。また、各項目には重み係数を設け、この重み係数と得点の積を評価項目に亘って足し合わせた値により各船型の評価値とした。

 

 

 

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