また、氷中旋回性能の向上を図るためにS.S.81/2〜9の喫水線付近のフレームラインを傾斜させ舷側部にナックルを設けるとともに、ナックルラインに沿ってリーマーを設けた。リーマー幅は、船の半幅の5%である。なお、リーマーの有無の影響を見るために、模型ではリーマーは着脱可能とし、リーマーのある船首を船首Dr、リーマーを外したものを船首Dと呼ぶ。一方、新船尾は、旋回性能の向上を図るために、S.S.1/2〜S.S.3までの喫水線近傍の肋骨線傾斜を傾斜させ、並行部を短くした。また、排氷性能の優れた船尾bをもとに、その推進性能向上を図るため肋骨線形状のナックルラインを傾斜させた。新船尾を船尾dと呼ぶ。
新船型D-d及びDr-dについて、平坦氷中における抵抗・自航試験、旋回試験及び氷丘脈中における抵抗試験の4種類の試験を行った。また、開水中については、平氷中の抵抗・自航性能について試験を行った。これらの新船型に対する試験はNKK及びMHIが分担した。
平坦氷中での抵抗試験結果を図A-12に示す。船首Dの抵抗は、船首A及び船首Bの抵抗の中間的な値を示す。また、リーマー付き船首Drの抵抗と船首Dの抵抗との間に有意な差が認められないことは興味深い。これは、リーマーの設計にあたってリーマー幅を船体平行部の幅の5%と比較的低く抑えた結果、リーマーによる船首幅の増加分が砕氷チャンネル幅内に収まり、リーマーによる抵抗の寄与の割合が小さかったためと考えられる。なお、ここで抵抗の無次元表示に用いて船幅Bは、リーマーを含まない幅である。