日本財団 図書館


これは、船尾bのフレームラインが極端なナックルを有し、船尾近傍での水線面下の排水量が絞られていること、並びに、船底付近のU型フレームラインが強調されているために、船尾付近の境界層及びビルジ渦の発達が促進されたためであると考えられる。このような船尾による流れの違いは伴流計測結果から認めることができる。

旋回試験の結果を表A-4に示す。船首形状、プロペラによる大きな違いは認められない。旋回圏・船長比及びアドバンス・船長比は、いずれも3.0程度となっている。

波浪中試験結果から、スラスト増加係数τを計算した結果を図A-10に示す。スラスト増加係数は船首Bの場合が最も高く、この傾向は短波長領域でより顕著となる。これは船首Bの喫水線形状が丸みを帯びたものとなっていることによる。逆に、ステム部における喫水線形状が鋭い船首Cは最も小さい抵抗増加を示す。

 

表A-4 平水中旋回試験結果

194-1.gif

 

194-2.gif

図A-10 波浪中におけるスラスト増加係数

 

1.4 新船型の開発及び模型実験

 

上に述べた、船首A、B、Cと船尾a、bの組み合わせから成る船型についての試験から得られた結果は以下のようにまとめることができる。

●氷中抵抗性能の観点からは船首Bが最も優れている。

●いずれの船型も氷中旋回性能が悪い。特に、船首Bの旋回性能が劣る。

●船尾bは排氷性能の観点からは良いものの、推進性能の観点からは船尾aが好ましい。

●平水中推進性能の観点からは船首形状の違いによる性能差は顕著ではないが、船首Aが最も優れ、B、Cの順となる。

●波浪中のスラスト増加の観点からは、船首Cがスラスト増加量が最も小さく、次いでA、Bの順となる。

このような点を考慮し、総合的に優秀な船型を設計することを試みた。

新船型の形状を図A-11に示す。新船首は氷中抵抗性能の優れた船首Bと開水中性能の優れた船首Aの特徴を採り入れた船首である。この船首は、ステム角は25度(船首Aと同一角度)とし、船首端付近での砕氷性能を確保するために船首Aに比べて喫水線の入射角度を大きく取った。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION