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そのため、試験についてのロシア政府よりの許認可は、INSROPの共同実施者であったロシア中央船舶海洋設計研究所(CNIIMF)と打ち合わせの上CNIIMFから申請し、1995年3月30日付けで許可証が交付された。試験船所有者のムルマンスク海運会社(MSCO)との傭船契約交渉は5回にも及び、1995年6月、漸く合意に至り、傭船契約が行われた。最終的に試験船として傭船されたKandalakshaは、1982年から19隻建造されたSA-15型船の中の1隻で、1984年にフィンランドで建造された全長174m,極域積載貨物量14,700トンの多目的貨物船である(図5.1)。ロシア商船としては最高のアイスクラスULAに属する。本船は中国・ロシア沿海州でマグネサイトと硼酸を積載した後、試験準備のため1995年7月29日、横浜港に入港した。8月1日出港までの3日間にて、下記の計測器・解析器を搬入・取付・据付・配線・動作試験を行った。センサー等配置場所を図5.1に示す。全てのセンサーの信号は居住区の一室に設けた計測センターに配線し、記録・解析作業を行った。

●GPSと解析用パソコン:船位置、船速、旋回径の測定など。

●モデムとパソコン:通信室に設置し、衛星氷況画像ファイルをコンピュータ通信で受信。

●加速度計:船首に3個、船体中央部に2個。水中での船体加速度を測定。

●鉛直ジャイロ:計測センターに据付。船体のピッチング・ローリング運動を計測。

●CCD-TVカメラ:船首部2台、船側1台。氷況をビデオ記録。画像処理による氷密接度・氷厚の計測。

●軸馬力計:プロペラ軸に取付。プロペラのスラスト、トルク、回転数、軸馬力を測定。

●圧力計:操舵機室の舵ピストン圧力計測用に4個取付。舵トルクに換算。

●アナログデータレコーダ、パソコンセット数式:計測室に設置。センサー信号の記録・解析。

●電気伝導度計、屈折式塩分濃度計:海水の塩分濃度を計測。

この様に、貨物船を用い、更に貨物積載状態で試験して種々の定量的計測を行ったことが、本実船試験航海の特筆すべき点である。

本試験航海で行った調査活動を要約すると、以下の通りである。

(1) ロシア語で記録される航海日誌を英語に転記し、解析する。また、基礎データとして、航路に沿った氷況を全て記録する。これらを用い、さらに文献等によるこれまでの航海実績・データと照らし合わせ、本航海全体を評価する。

(2) 人工衛星による氷況観測画像を航海中順次入手し、それらの氷海航行への有効性を評価する。

(3) 推進性能試験、旋回性能試験を実施して、SA-15型船舶の氷中航行性能を定量的に把握し、評価する。

(4) 本航海での実体験や船員の経験談を通して、NSR航行における技術的課題を明らかにする。

(5) 海水の塩分濃度や水温の他、気温・気圧・雲などの気象観測を行い、航路に沿った自然条件を調査する。

(6) 本航海や文献データ、さらには船員の意見などを通して、NSRの商業航路としての可能性を検討する。

 

 

 

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