(7) 調査団に含まれるプロのテレビ・ビデオ番組ディレクターとカメラマンにより、調査活動の様子を記録し、英語版及び目本語版の記録ビデオを作成する。
これら多岐にわたるミッションを遂行するため、調査団は日本、ロシア、カナダからの国際的な構成とし、専門分野も造船、航海、計測、海洋、海氷、気象の広い範囲から団員を選定した。調査団の構成は、日本人15名、ロシア人2名、カナダ人1名の計18名であり、お互いおよび本船乗組員との綿密な協力の下、船体に取り付けた種々のセンサや解析装置を駆使して、所定の調査活動を行った。本船は、Sokolov船長以下31名の乗組員全員ロシア人であったが、NSR啓開という大きな目的のために心を一つにし、言葉の障壁を乗り越えて、期待以上とも言える最高の協力関係を築くことができた。
5.3 実験結果
本実船試験航海は、1995年8月1日に横浜港を出港し、同年8月28日にノルウェー北端のキルキネス港に入港することにより、成功裏に終了した。NSRの氷況に関しては、1995年は異常な年であった。7月終わりに調査団に合流したロシア人団員によりもたらされた情報によると、NSRの東側において特に氷況が厳しく、ロシア観測史上、1948年以来2回目という厳しさであった。しかしながら、8月中旬に本船がベーリング海峡を通過するまでに北極海に低気圧が居座って南西風を継続してもたらしたため、シベリア北岸沿いの通常のNSRには結局氷が殆ど無いという状況となった。そのため本船は実験用の氷を求めて、北に航路をとることとした。