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地域航路の運航コスト

西地域航路はDiksonとハンブルクを結ぶ距離4,020海里の航路である。東地域航路はTiksiと横浜を結ぶ距離2,397海里の航路である。前者はNSRとしてはカラ海だけを、後者はラプテフ海、東シベリア海、チュクチ海を通る。航路の殆どは前述した浅い南航路を走るために喫水の浅い25BCを対象としたシミュレーションを行い、両者の特徴を明確にした。シミュレーションの方法は前述したMSVによるもので、1957〜1990年の氷況データを用い、約30年間の平均値として航海日数、速度、運航コストなどの月別の変化を調べた(図4.4-11.表4.4-9)。

東地域航路は砕氷船のエスコート平均日数は0.9〜11.2日と比較的長く、東NSRが氷況の厳しい海域であることが分る。一方、西地域航路はカラ海だけを通るので東に比べると氷況は遥かに穏やかで、砕氷船のエスコートを受ける平均日数も0.7〜2日であり、氷況の穏やかな年には砕氷船のエスコートなしで通年航行も可能である。船速も西地域航路については2〜5月のみが4〜6ノットの範囲であるが、それ以外の季節では10ノット前後の航海が可能である。1航海に要する月別の総コストと積載貨物量から換算した運賃の一覧を表4.4-9に示す。1航海の総コストは東地域航路が704〜898千ドル、西地域航路が457〜656千ドルの範囲である。海域別の航海速度、運航コストの詳細は巻末資料5-2に示した。

 

表4.4-9 月別の1航海の総コストと運賃(地域航路)

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図4.4-11 東地域航路、西地域航路の月別平均航海日数とその内訳(1957〜1990年の平均値)

 

NSRの季節的運用による年間の運航コスト

氷況の厳しい冬期はNSRを通るより、スエズ運河を通った方が運航費は安くなる傾向にある。氷況により、NSRとスエズ航路を切り替えて運賃がどこまで低減できるか試算することにした。対象としたのは北航路で、船は40BCと50BCを適用した。NSRが実用化される場合にも、季節によりNSRとスエズ航路を切り替えて運用することが現実的なシナリオであろう。如何なる指標により、切り替えるか考える必要がある。ここでは航行の難易度を表すIce Indexの積算値を使うことにした。40BCについてMVSにより求めた1980〜1989年の10年間の積算Ice Indexと運航コストの関係を示す(図4.4-12)。バラツキがやや大きいが、ほぼ積算Ice Indexと運航コストとの間に負の相関がある。

 

 

 

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