上記のような理由により、一般の航路と異なり、NSRにおいては航路を特定することはできない。しかしながら、ロシアにおいては、長年にわたる氷況観測データの蓄積並びに航行実績に基づき、幾つかの標準的な航路が考えられている。航路は夏期(6月から9月)と冬期(10月から翌年5月)により異なり、それぞれの季節における氷況の違いを反映したものとなっている(図4.2-6及び図4.2-7)。夏期においては、航路はアイスマッシフを避けながら、氷量の少ない海域あるいは水空きをたどりながら進んでいる。一方冬季における航路は、一般に夏期におけるものよりも北側にシフトしたものとなっている。これは、船舶が沿岸域の定着氷を避け、その沖側にあるポリニヤ等を選びながら航行することが多いことを示している。なお、NSR上には水路調査が充分ではない海域があり、これらの海域の通航には船長・パイロット等の経験が重要である。