一方、INSROP Phase IIの研究においては、4.4節に示すように、NSRを通ってヨーロッパからわが国に至る航海をシミュレートし、他の航路による輸送との経済性比較等を行った(WP-164)。このシミュレーションのためのベースデータとして、ハンブルクからNSRを通って横浜に至る航路の選定と航路上20海里(NM)毎の地点における水深その他のデータの作成がCNIIMFにより行われた(図4.2-8)(WP-108)。このシミュレーションでは、比較的小型で喫水が浅く大陸沿岸域の航行が可能な商船と、大型で喫水が深く島々の沖合いを通る商船とを研究の対象とした。これらの船舶の通る航路として、沿岸域の航路(南航路)、沖合い航路(北航路)を選定した。また、ロシア北極海沿岸地域とヨーロッパ及びわが国を結ぶ航路として、南航路上において、ディクソン沖とハンブルクを結ぶ航路とチクシ沖と横浜を結ぶ航路を、それぞれ、西地域航路及び東地域航路とした。南航路と北航路は、このシミュレーションの目的からは、喫水の異なる2種類の船舶を対象とするものであるが、季節による氷況の違いに基づく選定航路の代表例とも捉えることができよう。本研究において与えられた水深データより、沿岸域及び沖合いの両航路における水深変化を見ることができる(図4.2-9)。これまでにロシア沿岸域の一部の海域における水深の浅さについて述べてきたが、この図はこれを具体的に示す例である。図から判るように、東側NSRは浅水域が続く。特に、大陸沿岸域は水深が浅く、20mを切る海域も多い。