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3.3 北極海航路の自然条件

 

3.3.1 地理的環境

 

北極海航路(NSR)は、スカンジナビア半島の北を回ると、バレンツ海、カラ海、ラプテフ海、東シベリア海、チュクチ海を通ってベーリング海峡に至る。これらの海域を分けているのは、ユーラシア大陸の大陸棚上の諸島、ノバヤゼムリヤ、セベルナヤゼムリヤ、ノボシビルスク諸島、ウランゲル島であり、島とユーラシア大陸との間や、島と島との間には、狭い海峡が存在する。NSRを航行する船舶が通過する主な海峡を列記すると、ノバヤゼムリヤとユーラシア大陸との間にはバイガチ島があり、この島の北側の海峡がNSRの主要航路となるカラゲイト海峡、南側がユーゴルスキーシャール海峡である。セベルナヤゼムリヤとタイミル半島のチェリュスキン岬との間はビルキツキー海峡と呼ばれ、NSRの難関の一つに位置づけられている。セベルナヤゼムリヤの島の間を抜ける海峡はショカルスキー海峡と呼ばれる。ノボシビルスク諸島の所では、大陸側のドミトリラプテフ海峡と、島の間のサニコフ海峡がある。そして、ウランゲル島と大陸との間は、ロング海峡と名付けられている。

NSRは、ユーラシア大陸の大陸棚の上を航路としているので、水深の浅いところが多い。バレンツ海は、西部は200mより深いが、東部は100m前後であり、カラゲイト海峡は30m程度の水深である。カラ海は100mより浅いところが多く、起伏に富んでいて、水深が数mから20mの浅瀬が多く見られる海である。ピルキツキー海峡は、100mよりも深い。ラプテフ海は北極海中央部の深海が最も近づいている海であり、NSRは1,000m以深の海域を含むように通過する。ノボシビルスク諸島に近づくと、水深は20mよりも浅くなる。ドミトリラプテフ海峡もサニコフ海峡も20m前後であり、NSRで最も浅い海峡である。東シベリア海は、西部は20mより浅く、東部は40m前後のなだらかな海である。ロング海峡も40m程度であり、チュクチ海に入ると中央部は50m位で、ゆるやかに変化している。ベーリング海峡には中央に大小2つのダイオメド島があり、この島の東側が60mと深く、西側が50m弱とやや浅い海峡となっている。

これらの海峡は、海水や海氷の動きを拘束するので、海流に重なる潮流が激しい動きを見せ、多年氷の集積が起こると地域的なアイスマッシフを形成する原因となる。

 

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NSRの海域と海峡(WP-167)

 

 

 

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