3.3.2 低塩分水
NSRの沿岸には、ユーラシア大陸から多量の河川水が流れ込んでいる。その結果、オビ川とエニセイ川が流れ込むカラ海や、レナ川が流れ込むラプテフ海、インジギルカ川とコリマ川が流れ込む東シベリア海などでは、沿岸大陸棚域の広い範囲に低塩分水が広がっている。
海水の密度は温度と塩分に関係する。海水の塩分は海水1kg中の塩のg数、すなわち重量千分率(‰、パーミル)で表わされる。塩分0‰の淡水は4℃で密度が最大になり、0℃で凍る。塩分が増すにつれて、密度が最大となる温度(Tρ max)も、結氷する温度(Tf)も低下するが、最大密度温度の下がり方が大きいので、塩分が24.7‰のところで両者が交叉する。秋から冬にかけて淡水の湖の水温が下がるとき、冷えた水は重くなって対流を起こすが、4℃以下になると今度は軽くなって成層しながら表面だけが冷えていき、やがて結氷が始まる。海水の塩分は通常33〜35‰位であり、対流を続けながら結氷温度に達する。塩分24.7‰以下の水は最大密度温度が結氷温度より高く、淡水湖のような結氷をするので、結氷直前は成層していて対流混合が起こらない。