その結果をもとに「在宅ホスピスケアを必要とする対象者を退院時に把握するためのツール(チェックリスト)」を作成した(表8,表9)。表の作成にあたっては以下の考え方を基盤にして構成した。
1. 「予測的に問題発生の可能性を判断」し訪問看護の必要性を見出す
2. 「問題の内容・チェック項目には患者だけでなく家族に関する項目」も含める
問題が発生してから訪問看護を開始した場合、症状コントロールに努力しているうちに、生活機能を整えるための対策が遅れてしまうことがある。それが原因で在宅の継続ができず、入院することになる場合がある。本研究の事例の場合にも同様のことがあった。がん終末期では病状の進行速度が速いから、時間をかけて人間関係を確立したり、見えにくい問題を発見する余裕がない場合がある。問題発生以前に、問題発生を予測して訪問看護の関わりを始めていれば、急速に問題が深刻化しても対応しやすい。そのような観点からチェックリストの項目を構成した。
訪問看護が必要な対象であるかどうかを判断するためのチェック項目は、がん患者の病状や精神・心理的な問題発生を予測するチェックリストと、家族関係や介護力、生活環境などに関するチェックリストから構成されている。それらの項目の記入結果に基づき、最後に総合評価とその理由を記入するよう構成した。
2カ所のがん専門病院でこの記録用紙に記入してもらった。まだ改良すべき点が多々あることが分かったので、今後より多くの患者退院時に活用する機会を得たいと考えている。家族に関する項目については、病院入院中に看護婦が把握することが困難な現状がある。訪問看護が依頼された時点でこの用紙のコピーをもらい、家族や生活に関する部分は、訪問看護を実施しながら完成させていくという使い方もあるという意見があった。